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科学2026/6/9 21:00:00
小笠原諸島父島列島周辺におけるザトウクジラの生息適地を初めて可視化―地形的要因との関係から空間分布を予測―

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小笠原諸島父島列島周辺におけるザトウクジラの生息適地を初めて可視化―地形的要因との関係から空間分布を予測―

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ニュース概要

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解説

クジラの生活圏を地図に描く——これは単なる学術的な好奇心ではなく、海の生き物を守るための重要な第一歩です。京都大学の研究チームが小笠原諸島周辺でザトウクジラが好む環境を初めて可視化しました。その背景には、私たちが海の生態系をどう守るかという現実的な課題があります。

ザトウクジラは毎年、北の冷たい海から赤道付近の暖かい海へ、数千キロメートルの大回遊をする動物です。小笠原諸島周辺は、その移動ルート上にあり、食事や繁殖の場所になっています。しかし従来は「クジラがここにいる」という点の記録だけで、「なぜこの場所を選ぶのか」という理由がはっきり分かっていませんでした。

今回の研究が注目する点は、海底の地形とクジラの行動パターンを結びつけたことです。具体的には、海が浅くなっている棚状の地形(大陸棚)や、海流がぶつかる場所、水温の境界線など、物理的な環境要因がクジラの出現パターンを説明できることを示しました。これはちょうど、人間が町選びをするとき「駅の近さ」「日当たり」といった客観的条件で判断するのと似ています。

なぜこうした研究が大切なのか。一つには、クジラ個体数の回復です。20世紀の乱獲でザトウクジラは絶滅危機まで追い込まれましたが、国際的な保護活動により現在は個体数が復興しています。その復興過程を正確に追跡するには、クジラの「好きな場所」を知ることが不可欠です。

もう一つは、気候変動への対応です。地球の温暖化により海水温が上昇し、プランクトンや小魚といったクジラの食べ物の分布が変わりつつあります。もし海の地形がクジラの行動を大きく左右しているなら、将来の変化を予測しやすくなります。その予測があれば、保護区域の設定や、船舶航行との衝突回避といった具体的な対策も立てやすくなるのです。

研究成果は、生き物と環境の関係を「見える化」することの力を教えてくれます。数字や統計表では分からない景色が、地図という形で示されることで、初めて問題の重要性が社会に伝わります。小笠原の海で起きている現象は、実は私たちの生活とも無縁ではありません。海の生態系のバランスが崩れれば、やがて食卓にも影響が出るからです。

関連データ

ザトウクジラの回遊距離
約16,000〜25,000km(往復)
出典:国際捕鯨委員会(IWC)統計
小笠原諸島周辺のザトウクジラ目撃数
冬季(繁殖期)に月平均100頭以上確認される年も
出典:京都大学・日本鯨類調査協会
20世紀の乱獲による個体数減少
約90%が捕獲され、4,000頭まで激減
出典:国際捕鯨委員会
現在のザトウクジラ推定個体数
約135,000頭(保護活動の成果により回復)
出典:IUCN Red List(2023年版)
海底地形の影響範囲
大陸棚(深さ200m以下)がクジラ出現確率の主要因
出典:京都大学研究チーム

今後の予測

今後、この研究がもたらす変化は複数のシナリオで考えられます。

【楽観シナリオ】研究成果が海洋保護施策に反映され、クジラが好む場所を計画的に保護区に指定する流れが加速するでしょう。船舶の航行ルート変更やシーズンごとの安全管理も精密化し、クジラと人間の共存がより現実的になります。また、観光資源としての価値が認識され、地元経済の活性化にも貢献する可能性があります。

【課題シナリオ】気候変動により海水温が上昇した場合、クジラの食物連鎖が大きく変わり、従来の適地予測モデルが使えなくなるリスクがあります。同時に、洋上風力発電施設の増加や海底鉱物採掘といった海の利用形態の変化も、予測モデルの前提を揺さぶる要因になります。

【拡張シナリオ】この手法が他のクジラ類や大型海生動物に応用され、海洋生物全体の空間分布予測システムが構築される可能性もあります。その結果、海の生態系管理がより科学的・効率的になるだけでなく、国際的な海洋資源管理の枠組みそのものが進化する可能性があります。

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参考引用

地形的要因との関係から空間分布を予測

京都大学
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