News in Focus
テクノロジー2026/6/16 7:00:00
[ITmedia エンタープライズ] セキュリティ担当者を追い詰める「努力と不安のジレンマ」 認知バイアスから解き明かす

[ITmedia エンタープライズ] セキュリティ担当者を追い詰める「努力と不安のジレンマ」 認知バイアスから解き明かす

出典: ITmedia 全カテゴリ (原典を開く)

ニュース概要

サイバーセキュリティの現場で生じる「努力と不安のジレンマ」。その背景には、人間の防衛本能が引き起こす認知バイアスがある。現役CISOが、組織を思考停止に陥らせる心理的メカニズムを解説し、現場を疲弊させない解決策を示す。

解説

サイバーセキュリティの現場で、担当者たちが「頑張れば頑張るほど不安になる」という、なんとも皮肉な状況に陥っているのをご存じでしょうか。これを「努力と不安のジレンマ」と呼びます。

一体なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。実は、私たちの心の働き、特に「認知バイアス」というものが大きく関係していると言われています。

認知バイアスとは、簡単に言えば、人間が無意識のうちに持ってしまう「考え方の偏り」のこと。例えば、私たちは何か悪いことが起こるかもしれないと考えると、それを防ごうと必死になりますよね。これは人間の持つ大切な防衛本能ですが、セキュリティの世界では、これが裏目に出てしまうことがあるのです。

具体的には、サイバー攻撃は常に進化し、新しい脅威が次々と現れます。セキュリティ担当者は、それらに対応するために新しい対策を導入し、システムを強化します。しかし、どんなに頑張っても「これで本当に大丈夫なのか?」という不安が尽きることはありません。なぜなら、完璧なセキュリティなど存在しないからです。

この「完璧ではない」という事実が、担当者たちをさらに追い詰めます。何か問題が起きたらどうしよう、という不安が頭を離れず、さらに多くの対策を講じようとします。しかし、その努力がまた新たな不安を生み、まるで終わりなきマラソンのように感じられてしまうのです。

特に、組織のトップがセキュリティを「コスト」としか見ていなかったり、具体的なリスクを理解していなかったりすると、担当者のプレッシャーはさらに増します。十分な予算や人員が確保されない中で、常に最悪の事態を想定して対策を練らなければならない。これは、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。

このような状況は、担当者の「思考停止」を招きかねません。あまりにも多くの情報と不安に晒され続けると、人は効率的な判断ができなくなり、ただ目の前のタスクをこなすだけの状態になってしまうことがあります。これは、組織全体のセキュリティレベルを下げる危険性すらあります。

では、このジレンマをどう乗り越えれば良いのでしょうか。大切なのは、完璧を目指すのではなく、「現実的なリスク管理」に焦点を当てることです。すべての攻撃を防ぐことは不可能だと割り切り、自社にとって最も重要な情報やシステムは何かを特定し、そこを重点的に守る。そして、万が一攻撃を受けても、被害を最小限に抑え、素早く回復できる体制を整える、という考え方です。

また、組織全体でセキュリティリスクを共有し、担当者だけに責任を押し付けないことも重要です。経営層がセキュリティの重要性を理解し、適切な投資を行い、従業員一人ひとりがセキュリティ意識を持つことで、担当者の負担は大きく軽減されるはずです。心理的な側面を理解し、チーム全体で取り組む姿勢が、この「努力と不安のジレンマ」を解消する鍵となるでしょう。

関連データ

サイバー攻撃の検出にかかる平均日数
200日以上
出典:IBM Security X-Force Threat Intelligence Index 2023
セキュリティ担当者の離職意向
約半数が転職を検討
出典:ISC² Cybersecurity Workforce Study 2023
セキュリティインシデントの平均コスト
約445万ドル(約6.5億円)
出典:IBM Cost of a Data Breach Report 2023
セキュリティ予算の対売上高比率
多くの企業で1%未満
出典:Gartner

今後の予測

今後のサイバーセキュリティの世界では、この「努力と不安のジレンマ」を解消するためのアプローチがより一層重要になるでしょう。

**シナリオ1:心理的側面への注目と組織文化の変革** セキュリティ対策は技術的な側面だけでなく、担当者の心理的な負担軽減や組織全体のセキュリティ意識向上に焦点が当たるようになります。経営層がリスク管理の重要性を深く理解し、セキュリティを「事業継続のための投資」と位置づけることで、担当者は精神的な余裕を持って業務に取り組めるようになるでしょう。また、AIを活用した自動化が進み、ルーティンワークから解放されることで、より戦略的な業務に集中できるようになるかもしれません。

**シナリオ2:レジリエンス(回復力)重視への移行** 完璧な防御は不可能であるという前提に立ち、攻撃を受けた際の「いかに早く検知し、復旧するか」というレジリエンスの概念が主流になります。これにより、担当者は過度な防御の努力から解放され、インシデント対応や事業継続計画の策定に注力するようになります。サイバー保険の活用も進み、金銭的なリスクヘッジも一般化する可能性があります。

**シナリオ3:人材不足の深刻化と外部委託の拡大** もし現状のジレンマが解消されなければ、セキュリティ人材の燃え尽き症候群や離職がさらに加速し、深刻な人材不足に陥る可能性があります。結果として、多くの企業がセキュリティ業務を専門の外部業者に委託する「マネージドセキュリティサービス(MSS)」の利用を拡大せざるを得なくなるでしょう。これはコスト増につながる一方で、専門家による高度なサービスを受けられるメリットもあります。

ニュースタイムライン

  1. 2026年6月16日

    [ITmedia エンタープライズ] AI活用は実験から実績へ Microsoftが示した経営層の論点

    ITmedia 全カテゴリ

  2. 2026年6月16日

    [ITmedia エンタープライズ] 「Dellがシェア首位」の要因は? 売上高40%増で独走続く

    ITmedia 全カテゴリ

  3. 2026年6月17日

    SpaceX、AIコーディング「Cursor」を9.6兆円で買収 「近く大幅な改善」へ(ITmedia NEWS)

    Yahoo!ニュース IT

  4. 2026年6月17日

    [ITmedia エグゼクティブ] シャープ、スマートリングとスマートウオッチ市場に参入 生体データ取得、スマホで健康管理

    ITmedia 全カテゴリ

  5. 2026年6月17日

    [ITmedia Mobile] Google、「Wear OS 7」を「Pixel Watch 2」以降に配信開始 リアルタイム情報表示やバッテリー最大10%改善

    ITmedia 全カテゴリ

  6. 2026年6月17日

    [ITmedia Mobile] 【ワークマン】2900円の「防水デイバッグ」 雨の多い時期も止水ファスナーで安心

    ITmedia 全カテゴリ

  7. 2026年6月17日

    【ワークマン】2900円の「防水デイバッグ」 雨の多い時期も止水ファスナーで安心(ITmedia Mobile)

    Yahoo!ニュース IT

  8. 2026年6月17日

    [ITmedia News] 演者は230km先? 浜松・横浜・千葉をまたいでVTuberライブ ヤマハが披露した“次世代ライブ制作基盤”とは

    ITmedia 全カテゴリ

  9. 2026年6月17日

    日立、OpenAIとの連携を本格化 「Codex」でレガシーシステム刷新、サイバー防衛も(ITmedia NEWS)

    Yahoo!ニュース IT

  10. 2026年6月17日

    Google、「Wear OS 7」を「Pixel Watch 2」以降に配信開始 リアルタイム情報表示やバッテリー最大10%改善(ITmedia Mobile)

    Yahoo!ニュース IT

参考引用

「努力と不安のジレンマ」

ITmedia 全カテゴリ

認知バイアスから解き明かす

ITmedia 全カテゴリ

組織を思考停止に陥らせる

ITmedia 全カテゴリ
🤖

記事AI質問チャット

PREMIUM

この記事についてAIが質問に答えます。背景・要約・影響まで深堀り。

ログインして利用

🛡️ 読者ファクトチェック0

読者が投稿し、管理者承認後に表示される事実確認情報

まだ承認済みのファクトチェックはありません。

ファクトチェックを投稿するには ログイン が必要です

関連記事

こんな記事も読まれています

コメント (0)

コメント投稿にはログインが必要です。

まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみましょう。

この記事について疑問がありますか?

事実誤認や不適切な内容について通報できます (要ログイン)。

異議申し立て・通報